雑記1147

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『ロシア異界幻想』

真に幻想的なるものは、いわば、"はだか"の姿では決して現れないものであるをその顕現は人生の諸事件の摩訶不思議なる意味を無理矢理信ぜざるを得なくするようなものでは決してなく、むしろそれを指し示し、"暗示する"べきものである。真に幻想的なるものには、諸現象の、通常的・日常的関係からなし得る単純な説明の外的・形式的可能性が常に残されているものではあるが、そのさい、その説明は内的な信憑性を決定的に欠くのである。

『ロシア異界幻想』栗原成郎
2002/2/20 岩波新書


なるほど。幻想的とは、"ケハイ"が感じられる・実際に目に見えるものから感じ取れる"残り香"のようなものであり、だからこそ醸し出るミステリアスな含みがより幻想的イメージを引き立てると。
あまり見たことの無い切り口から面白い文章がたくさん書かれていました。



好きなのは無敵戦士アニカが
「死」に殺され、歌われる歌。

    主なる神はアニカの霊をとるために
    二人の天使   二人の大天使を遣わされた
    天使らはアニカの霊を引き抜いた
    あばらぼねを通して
    丁重にでもなくねんごろにでもなく優しくでもなく
    アニカの霊を槍の穂先に刺し
    アニカの霊を高々とかざすや
    アニカの霊を深々と闇の中に投げおとした
    永劫の苦しみの中に  燃えさかる業火の中に          

「死」の前における人間の無力の象徴、神を畏れぬ罪人の代表として描かれているのでしょうか。死に、神に救済されるない道もあるのだな。
「死」を神の創造物とするならば、「死」に立ち向かうことは神に立ち向かうことも同義、つまり、神に逆らった罪人ということになるのでしょう。こういう話を聞かされながら育つと、そりゃ神は絶対という価値観が刷り込まれますね。