雑記1147

yoshinashi stuffs

『O嬢の物語』『Historie d' O』


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やっと読了。少し読み辛いながらもごりごりすすんでいきました。

ポーリーヌ・レアージュ(Pauline Reage)という匿名女性作家が書いた物語。

キーワードは 所有・譲渡・服従・奴隷・拷問・苦痛(肉体的 精神的)・快楽・マゾヒズム
ではないでしょうか。
お話しの流れは、恋人に売られた女が調教されることにより 高度な精神を得て開放されてゆくと言えばキレイかもしれません。

「一人の女がすすんで自由を放棄し、奴隷状態を受け入れ、男たちに強いられた服従と涙と拷問とprostitutionのさなかで、訓練を積み、ある晴れやかな魂の状態に達する物語」
との説明書き。

予想に反して?官能描写は驚くほど少ないところが文学的価値(社会通念的な)を強調してます。作者の意図はそこにはなかったのでしょう。これほどまでに肉体が卑しめられ、蹂躙されているにも関わらず、エロチックなシーン自体はとてもさらっとしています。その代わり、拷問描写はとても精密なのは"痛み"の この物語で持つ意味が大きいからではないかと。

最後、Oは人ではなかったのでしょう。腎に烙印を押され、鉄輪で陰部を封鎖され、全身を脱毛されたOは裸でフクロウの仮面を被り、舞踏会へ鎖で引かれてゆきます。好奇の目にさらされる彼女は禍々しいオブジェとその価値は変わらない状態でした。

いろいろとデペイズマンが起こっている状態からシュルレアリスム的な臭いを感じて好きでしたとても。

主な調教者であったステファン卿がOに恋してしまったのもかわいい話だと思いました。情が入るとはこのことかと。ただお構いなしに鞭は打つのですけれど...
歪んだ愛にも見えますが真摯に愛していたことを考えるとむしろ一途だったのでは?(他の女との性交は、Oを愛していることと全く関係ない)



削除された最後の章では、ステファン卿に見放されたOはそんな自分を見て自ら命を絶つみたいです。なんて幸せな終わりだろう。死って最高レベルの開放ですし、Oの場合は殊更たくさんの鎖(物理的にも精神的にも)に縛られていたのでさぞかし幸せだっただろうな...

ただ、どうやって死んだのかが気になります。薬も頸動脈切断も飛び降りも彼女らしくない。精神を上り詰めた彼女は、外的な要員を受けることが似合わないと思ってしまいました。毒死は人間らしすぎます。血を吹いているのも同様。飛び降りてぐちゃぐちゃになるのも(肉体からの解脱を強調する意を汲み取っても)美しく無いのでダメです。

自分のスイッチをパチンとするだけ、はい終了。くらいが似合うのではないでしょうか。


非合理的な欲望を体現していた、変わった物語でした。